インフレ時代、なぜ“金(ゴールド)”なのか|3%インフレと円安でも資産を守る考え方

ゴールド投資の始め方

最近、スーパーのレジで合計金額を見たときや、
電気代の請求書を開いた瞬間に、
「前より、確実に高くなっている…」
そう感じたことはありませんか。

僕は以前、証券会社で10年以上、
資産運用や退職金設計の相談を受けてきました。
その中で、インフレが本格的に話題になる前から、
同じような声を何度も聞いてきたんです。

「ちゃんと貯金してきたはずなのに、
なぜか将来が不安なんです」

ニュースでは「インフレ」「物価上昇」という言葉が並びますが、
インフレは決して遠い経済ニュースではありません。
気づかないうちに、家計や貯金の“力”を少しずつ弱めていく現実です。

そして今、多くの方が心の奥で、
こんな問いを抱え始めています。

「貯金しているだけで、本当に大丈夫なんだろうか…」

この記事では、不安をあおることはしません。
数字を並べて焦らせるつもりもありません。

金(ゴールド)を、
「儲かるかどうか」ではなく、
インフレ時代に“資産と心を守るための選択肢”として、
できるだけやさしく、落ち着いてお話しします。

読み終えたとき、
少しだけ肩の力が抜けて、
「焦らなくても、準備はできる」
そう感じてもらえたら嬉しいです。


インフレとは?「今」起きていることを整理しよう

インフレ(インフレーション)とは、
とてもシンプルに言えば、

「お金そのものが、少しずつ軽くなっていく現象」

です。

以前は100円で買えていたものが、
110円、120円になっている。
これは「モノが高くなった」というより、

同じ100円が、以前ほどの働きをしなくなった
と考えたほうが、実感に近いかもしれません。

僕が証券会社にいた頃、
お客様にこんな質問をよくしました。

「10年前の1万円と、今の1万円。
同じ価値に感じますか?」

多くの方が、少し考えてからこう答えます。

「正直、今のほうが軽く感じますね」

それが、インフレの正体です。

最近よく耳にする「インフレ率3%」
この数字だけを見ると、「大したことない」と感じるかもしれません。

でも、ここで少しだけ視点を変えてみましょう。

仮に、今100万円を銀行に預けていて、
金利はほぼゼロ。
一方で、物価だけが毎年3%ずつ上がっていく。

この状態が10年続くと、
帳面上の金額は100万円のままでも、

  • 買えるモノの量は、確実に減り
  • 感覚としては、75万円前後の力しか持たない

そんな状態になります。

ここで大切なのは、
誰かがあなたのお金を奪ったわけではないという点です。

インフレは、

気づかれないように、
静かに、少しずつ、
お金の役割を変えていく

そんな存在です。

だからこそ怖いのです。

ある日突然ショックが来るわけではない。
ニュースを見ている間にも、
家計簿をつけている間にも、

「何もしていないこと」そのものが、結果として影響を受ける

それが、今私たちが向き合っているインフレという現実です。


なぜ金(ゴールド)はインフレに強いと言われるのか

インフレの話になると、
必ずと言っていいほど「金(ゴールド)」が登場します。

これはイメージや流行の話ではありません。
お金の仕組みを数字で整理していくと、自然に行き着く結論です。

ここでは、できるだけ感覚論を避けて、
事実ベースで考えてみましょう。


金は「量を増やせない資産」だから

まず、日本円を含む通貨は、
景気対策や財政支出のために、
必要に応じて発行量を増やすことができます

実際、日本だけでなく、
アメリカやヨーロッパでも、
過去に大規模な金融緩和が行われてきました。

通貨の量が増えると、
1円あたり・1ドルあたりの価値は、
相対的に下がりやすくなります。

一方で、金はどうでしょうか。

金の年間産出量は、
世界全体で見ても毎年ほぼ一定で、
急激に増やすことはできません

つまり、

  • 通貨は「増える」
  • 金は「ほとんど増えない」

この違いが、インフレ時に表面化します。

市場に出回るお金の量が増え、
モノの価格が上がっていく中でも、
金そのものの希少性は変わらない。

その結果、
通貨の価値が下がる局面で、相対的に金の価値が保たれやすい
という現象が起きます。


数字で見ると「守られている感覚」がわかりやすい

ここで、よくある状況を整理してみます。

仮に、

  • 銀行預金100万円
  • 金利はほぼゼロ
  • インフレ率が年3%

という状態が、数年続いたとします。

この場合、預金残高は100万円のままですが、
100万円で買えるモノの量は、毎年3%ずつ減っていく
ことになります。

10年後には、

  • 数字上は100万円
  • 実際の購買力は、およそ75万円前後

という感覚に近づきます。

重要なのは、
預金が減ったわけではないという点です。

ただ、

「使える力」が静かに下がった

それだけです。

金がインフレに強いと言われるのは、
この購買力の低下を受けにくい場所として、
長い歴史の中で選ばれてきたからです。


世界共通で価値が通用するという事実

もうひとつ、数字では表しにくいですが、
とても重要なポイントがあります。

それは、

金は、どの国でも同じ「価値の基準」で扱われる

という点です。

円は日本国内でしか使えません。
ドルはアメリカの信用が前提です。

一方、金は

  • どの国でも
  • どの通貨圏でも
  • 同じ基準で取引される

資産です。

そのため、インフレや通貨不安が起きると、
各国の中央銀行や長期投資家が、
資産の一部を金で保有するという行動を取ります。

これは短期的な値上がりを狙った動きではなく、

どの通貨の価値が下がっても、
影響を受けにくい位置に資産を置く

という、極めて実務的な判断です。

金がインフレの話題で語られるのは、
不安を煽るためではありません。


通貨の価値が変わるという前提に、
最も素直に対応できる資産のひとつ

それが、金(ゴールド)だからです。


インフレ3%と円安が重なると、何が起きるのか

今の日本を考えるうえで、
どうしても避けて通れないのが、

「インフレ」と「円安」が同時に進む状態

です。

まず円安とは、
円の価値が、他の通貨に対して下がること

これは「海外のモノを買う力が弱くなる」と言い換えることもできます。

たとえば、
原材料やエネルギー、食料品の多くを輸入に頼っている日本では、
円安が進むだけで、仕入れ価格は上がりやすくなります。

そこにインフレが重なると、
企業側のコスト増は吸収しきれず、

  • 食品や日用品の値上げ
  • 電気・ガスなど生活インフラの負担増
  • 外食やサービス価格の上昇

といった形で、
私たちの生活に直接跳ね返ってきます


ここで、家計の感覚に近い話をしてみましょう。

仮に、
毎月の生活費が30万円の家庭があるとします。

インフレ率3%が続くと、
同じ暮らしを維持するために必要なお金は、
1年後には約31万円になります。

差は1万円ほどですが、
これが5年、10年と積み重なると、
「気づいたら余裕がなくなっていた」
という感覚になりやすい。

しかも円安が進んでいると、
この負担増は止まりにくいのが現実です。


一方で、資産の側はどうでしょうか。

現金で持っているお金は、
数字は変わらなくても、

使える力(購買力)が、少しずつ下がっていく

という影響を受けます。

ここで登場するのが、
金(ゴールド)です。

金の価格は、世界では主にドル建てで決まります。

そのため、

  • ドルに対して円が弱くなる(円安)
  • 世界の金価格が大きく変わらなくても

円建てで見た金の価格は、
結果として上がりやすくなります。

これは投機的な話ではなく、
為替の構造として自然に起きることです。


ただし、ここで大切なのは、

「金は必ず儲かる」という話ではない

という点です。

インフレと円安が重なる時代に、
金が注目される理由は、


円だけに価値を置かない、
もうひとつの「立ち位置」を持てる

という点にあります。

現金か、投資か、という二択ではありません。


通貨の価値が揺れる前提に立ったとき、
どこに資産を置いておくと心が落ち着くか

その視点で考えると、
金(ゴールド)は、とても静かな選択肢になります。


インフレ対策としての金投資|向いている人・向かない人

ここまで読んで、

「金がインフレに強い理由は分かったけれど、
それが自分に必要なのかは、まだ分からない」

そう感じている方も多いと思います。

そこでこの章では、
「金を持つ意味が生きやすい人」と、そうでない人を、
できるだけ現実的な視点で整理してみます。


金が向いている人

まず、金がインフレ対策として機能しやすいのは、
次のようなタイプの方です。

  • 資産の多くを預金で持っている人
  • 株価の上下で気持ちが大きく揺れてしまう人
  • 老後資金や生活防衛資金を「減らしたくない」人

たとえば、
1000万円の金融資産のうち、
ほとんどを預金で持っているケースを考えてみましょう。

インフレ率が年3%前後で続くと、
数字上は1000万円のままでも、
実際に使える力は、少しずつ弱くなっていきます。

ここで重要なのは、

「減っていないのに、不利になっている」

という状態が起きることです。

こうした場合、
資産の一部を通貨とは性質の違う金に分けておくことで、

  • インフレの影響を受けにくい場所をつくる
  • 円だけに依存しない状態をつくる

という意味が生まれます。

「大きく増やすため」ではなく、
全体のバランスを崩さないための金。

この考え方がしっくりくる人には、
金はインフレ対策として向いています。


金が向かない人

一方で、金があまり向かないのは、
次のような考え方をしている場合です。

  • 短期間で資産を大きく増やしたい人
  • 値上がり益を積極的に狙いたい人
  • 利息や配当などの定期収入を重視する人

金は、

  • 配当が出るわけでもなく
  • 利息がつくわけでもなく
  • 短期で必ず上がる資産でもない

という性質を持っています。

そのため、

「増えていない時間が耐えられない」

という方にとっては、
ストレスの多い資産になりやすい。

金は、
成果を急ぐ人より、時間を味方につけたい人向けの資産です。


ここまでをまとめると、

金は「増やすために持つ資産」ではなく、
「減らさないために置いておく資産」

という位置づけになります。

この前提を理解していないと、
金は「つまらない投資」に見えてしまいます。


金は“保険”のような存在

火災保険や医療保険に入るとき、
多くの人はこう考えます。

「使わずに済むなら、それが一番いい」

金も、よく似ています。

何も起きなければ、
価格が大きく動かない時間が続くかもしれません。

でも、

  • インフレが想定より長引いたとき
  • 通貨価値に不安が広がったとき
  • 金融市場が大きく揺れたとき

そうした局面で、

「持っていてよかった」

と感じやすいのが、金です。

金は、

未来を当てにいく資産ではなく、
未来が外れたときに備える資産

と言ってもいいかもしれません。

インフレ対策として金を考えるなら、
この保険としての役割を理解したうえで、
静かに、必要な分だけ持つ。

それが、もっとも現実的で、
心に負担の少ない付き合い方だと、僕は思います。


まとめ|インフレ時代に必要なのは「焦らない準備」

インフレは、必要以上に怖がるものではありません。

ただひとつ、確かなことがあります。

何もしないまま時間だけが過ぎていくことが、
結果としていちばん不安を大きくしてしまう

インフレは、ある日突然すべてを変える出来事ではなく、
気づかないうちに、少しずつ前提を変えていく現象です。

物価が上がり、
通貨の「使える力」が静かに弱まり、
昨日までと同じ感覚でいると、
いつの間にか余裕が減っていく。

だからこそ大切なのは、

先を当てにいくことではなく、
前提が変わっても慌てない準備

だと、僕は思っています。

金(ゴールド)は、
派手に儲かる資産ではありません。

値動きを追いかけて楽しむものでも、
短期間で成果を出すための道具でもない。

それでも金が語られるのは、


通貨の価値が揺らぐ時代において、
「変わらない軸」をひとつ持てるから

です。

すべてを金に変える必要はありません。
持たなければならないものでもありません。

ただ、

  • 現金だけでいいのか
  • 円だけに価値を置いていいのか
  • もし前提が変わったらどうするか

この問いを、一度自分の中で整理しておくこと。

それだけで、
インフレという言葉に対する見え方は、
ずいぶん変わってくるはずです。

今日すぐに行動しなくても大丈夫です。

まずは、知ること。
仕組みを理解すること。
そして、自分なりの「守り方」を考えてみること。

それは決して遅い準備ではありません。


焦らず、でも目をそらさず。
それが、インフレ時代を生きるうえでの、
いちばん現実的な姿勢だと、僕は思います。


参考情報・出典

  • World Gold Council(世界金協会)
    https://www.gold.org
  • 野村證券|資産運用コラム
    https://www.nomura.co.jp/wealthstyle/
  • CFA Institute|Gold and Inflation
    https://blogs.cfainstitute.org

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。
投資判断は、ご自身の状況や価値観に照らして行ってください。

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