ゴールド価格が上がっている。
最近、ニュースやSNSでそんな言葉を目にしない日はありません。
以前、資産運用の相談を仕事にしていた頃、
相場が動くたびに、人それぞれの「本音」に触れる機会がありました。
「よかった、安心しました」という声と、
もう一つは——
「……でも、なんだか落ち着かないんです」
今でも、その感覚をよく覚えています。
価格が上がっているのに、
周りから「儲かってますね」と言われるのに、
なぜか胸の奥がざわっとする。
本来なら、
価格が上がる=安心のはずなのに、
- 今から始めても遅い気がする
- もう天井なんじゃないかと疑ってしまう
- 喜んでいいのか、不安でいいのかわからない
そんな気持ちが、静かに心に残る。
もしあなたが今、
「上がっているのに、なぜか不安」
そんな違和感を抱えているなら、安心してください。
それは弱さでも、知識不足でもありません。
むしろ、
お金と、自分の人生を大切に考えている証拠です。
今日は、
ゴールド投資を10年以上見てきた一人として、
そして実際に向き合い続けている当事者として、
「なぜゴールドは上がっても不安になるのか」
その正体を、数字ではなく、心の目線でほどいていきます。
読み終えるころには、
「どうするか」より先に、
「どう向き合えばいいか」が、きっと見えてくるはずです。
ゴールドが上がっているのに、不安が消えない理由

ゴールド価格が上がっていると聞くと、多くの人が、ほぼ同じ言葉を口にします。
「もう上がりすぎじゃない?」
「さすがに今から買うのは怖い気がする」
これは、投資に慣れている人でも、
ごく自然に湧いてくる感情です。
実際、数字を見れば、その感覚も無理はありません。
少し前まで、
金は1グラムあたり6,000円台、7,000円台で語られることも多い資産でした。
それが今では、
1グラム=25,000円を超える水準が話題になる。
もし仮に、
10年前に100gの金を持っていたとしたら、
- 当時:約70万円前後
- 現在:約250万円前後
数字だけを見ると、
「ものすごく上がった資産」に見えます。
だからこそ、
- ここから入るのは遅すぎるのではないか
- いま買うのは、天井づかみになるのではないか
- もし下がったら、その判断を後悔するのではないか
そんな不安が、一気に押し寄せてくる。
でも、ここで一度、立ち止まって考えてみてほしいんです。
私たちが本当に怖れているのは、
「25,000円」という価格そのものではありません。
怖いのは、
- 判断を間違えたと感じる未来
- 自分だけが損をしたと思う瞬間
- 「やらなければよかった」と後悔する気持ち
つまり、不安の正体は
数字ではなく、未来の感情なんです。
投資は理屈の世界だ、とよく言われます。
でも実際にお金を動かす瞬間、最初に反応するのは理屈ではありません。
心です。
これは、かつて金融の現場で多くの相談に向き合っていた頃も、
そして今、自分自身のお金と向き合う立場になってからも、
何ひとつ変わらず感じていることです。
価格が大きく動けば動くほど、
- 自分の判断は正しいのか
- 欲に引っ張られていないか
- この選択と、これからも付き合えるか
心は、より慎重になります。
だから、
ゴールドが25,000円を超えていても不安になるのは、
失敗しているからでも、
知識が足りないからでもありません。
人生のお金を、ちゃんと大切に扱おうとしている証拠です。
僕はこの不安を、
消すべきものだとは思っていません。
むしろ、
お金と距離を保ち、暴走しないためのブレーキだと考えています。
そもそも、なぜゴールドは上がるのか(でも安心とは限らない)

ここでは少しだけ、事実としての話をします。
ゴールドは昔から、
- インフレが進むとき
- 戦争や地政学リスクが高まるとき
- 通貨の価値そのものが揺らぐとき
に選ばれやすい資産です。
理由はとてもシンプルで、
金は「誰かの信用」によって成り立っていない資産だからです。
株は企業の信用、
債券は国や企業の信用、
通貨は国家や中央銀行の信用で価値が保たれています。
一方でゴールドは、
「それ自体に価値がある」と世界中で共通認識されている、
少し特殊な存在です。
だから、
「何を信じたらいいかわからない」
「この先の正解が見えない」
そんな空気が広がるほど、
金は静かに、でも確実に買われてきました。
実際、現在の日本国内の金価格は、
1グラムあたり約26,000円前後という水準で推移しています。
これは、10年ほど前の価格と比べると、
おおよそ3倍以上です。
たとえば、
10年前に100gの金を持っていたとしたら、
- 当時:約80万円前後
- 現在:約260万円前後
数字だけを見ると、
「強烈な上昇」を感じると思います。
ただし、ここがとても大切なところです。
価格が上がる理由と、
心が安心できる理由は、まったく別ものです。
ゴールドは、配当も利息も生みません。
株のように
- 毎年いくら増えた
- 配当が入った
といった「手応え」がありません。
だからこそ、
- 本当に意味があるのか
- 持ち続ける理由は何なのか
- いつ手放すべきなのか
と、考え込んでしまいやすい。
これは欠点というより、
ゴールドという資産が持つ“性格”です。
ゴールド投資の「不安」は、とてもまっとうな感情

投資の世界では、
「不安を感じるのはよくないこと」
「迷っているうちは成功しない」
そんな言葉を見かけることがあります。
でも、ゴールド投資に関しては、
僕はまったく逆だと思っています。
不安を感じるということは、
- 生活を守ろうとしている
- 失ってはいけないものがある
- お金を軽く扱っていない
ということ。
それは、とても健全で、
大人として自然な姿勢です。
ゴールドは、
短期間で人生を変えるような「一発逆転」の資産ではありません。
むしろ、
「どれくらい持つと、自分は落ち着くのか」
「どこまでなら、下がっても耐えられるのか」
そんな自分自身の価値観を映し出す鏡のような存在です。
だから、不安は
あなたが弱いから生まれるのではありません。
ちゃんと考え、人生とお金を結びつけているから生まれるのです。
不安になる人ほど、ゴールド投資に向いている理由
少し意外に聞こえるかもしれませんが、
僕はずっと、こう感じています。
ゴールド投資に向いているのは、不安を感じやすい人です。
なぜなら、不安を感じる人ほど、
お金との距離感を「慎重に」考えられるからです。
いまのゴールドは、
誰でも気軽に「ちょっと買ってみよう」と言える価格帯ではありません。
だからこそ、
- いきなり大きな金額を入れない
- 生活費と投資資金をきちんと分ける
- 自分が落ち着いていられる量を考える
こうした判断が、自然にできる人が増えています。
これは弱さではなく、
投資における大きな強さです。
たとえば、金を「守りの資産」として持つ場合、
大切なのは利益の大きさではありません。
価格が動いたとき、自分の心がどう反応するか
そこを想像できているかどうかです。
仮に、
「このくらいなら下がっても生活には影響しない」
そう思える範囲で持っていると、
- 毎日価格を確認しなくなる
- ニュースに振り回されにくくなる
- 短期の上下に意味を感じなくなる
不思議なことに、
この状態になると、ゴールドは「不安の種」ではなく、
心を落ち着かせる存在に変わります。
ゴールド投資に向いているのは、こんな人です。
- 全財産を投じようとしない人
- 生活費と投資をきちんと分けられる人
- 「増やす」より「守る」を大切にしたい人
こういう人は、
価格が上がっても舞い上がらず、
下がっても自分を責めすぎません。
逆に、
- 短期間で結果を出したい人
- 値動きが気になって仕方がない人
にとっては、
ゴールドはストレスの多い資産になりがちです。
それは能力の問題ではなく、
相性の問題です。
企業サイトでは「おすすめです」とまとめられがちですが、
僕は、そこに少し違和感があります。
合わない人がいるという前提を持てることこそ、
ゴールド投資を安心して続けるための、いちばん大切な条件だからです。
もしあなたが、
「高いな」「怖いな」と感じているなら、
それはもう、
ゴールドと向き合う準備ができている証拠かもしれません。
それでも私が、ゴールド投資を手放さないワケ

正直に言います。
ゴールドで、人生が変わるほど儲けたことはありません。
短期間で資産が何倍にもなった、
そんな派手な経験もありません。
それでも、
僕がゴールド投資を手放さない理由は、たったひとつです。
心が大きく揺れたとき、必ず戻ってこられる場所だから。
株式市場が荒れているとき、
為替が大きく動いているとき、
ニュースが不安をあおるとき。
そんな場面で、
自分の資産の一部に「急がない存在」があるかどうかは、
想像以上に大きな違いを生みます。
たとえば、
資産の中に、数十万円から数百万円規模で
「すぐに結論を出さなくていい資産」がある。
それだけで、
- 全部を売るか、買うかで悩まなくていい
- 今日の値動きに答えを出さなくていい
- 感情のまま行動しなくていい
という余白が生まれます。
これは、数字では測れませんが、
投資を続けるうえでは、とても大きな価値です。
実際、金の価格はここ数年で大きく動き、
「高すぎるのでは」と感じる水準まで来ています。
それでも僕は、
「上がるか」「下がるか」より先に、
こう考えるようにしています。
この資産があることで、
自分は冷静でいられているか。
答えは、いつも同じです。
株が下がった日でも、
相場が読めなくなったときでも、
「全部が不安な状態」にはならない。
ゴールドは、
僕にとって利益を増やすための道具というより、
判断を間違えないための支えです。
だから、無理に増やそうともしません。
減ったからといって、慌てて処分することもありません。
ただ、そこにある。
それだけで、
人は一歩引いて物事を考えられるようになります。
ゴールドは、僕にとって
資産のための保険であると同時に、
心の保険でもあります。
そして、投資を長く続けるうえで、
いちばん守るべきものは、
お金そのものより、冷静な自分だと思っています。
ゴールドと付き合うときに、私が決めている3つのこと

ゴールド投資を続ける中で、
僕が意識しているのは、細かいルールではありません。
たった3つの「姿勢」だけです。
- 上がっても舞い上がらない
- 下がっても自分を責めない
- 生活を犠牲にしない
ひとつずつ、少しだけ補足しますね。
上がっても舞い上がらない
金の価格が上がると、
「もっと買ったほうがよかった」
「いまからでも増やすべきか」
そんな気持ちが、どうしても湧いてきます。
でも僕は、価格が上がったときほど、
何もしないと決めています。
仮に、
数十万円分のゴールドを持っていて評価額が増えたとしても、
それは「たまたま環境がそうなっただけ」です。
自分の判断力が急に上がったわけではありません。
ここで舞い上がらないことが、
次の失敗を防いでくれます。
下がっても自分を責めない
逆に、価格が下がると、
「やっぱり買うべきじゃなかった」
「タイミングを間違えた」
そうやって、自分を責めたくなります。
でも、ゴールドは短期の正解を当てにいく資産ではありません。
たとえば、
仮に数十万円分の評価額が一時的に目減りしたとしても、
生活が変わるわけではない。
そういう範囲で持っているなら、
それは「失敗」ではなく、想定内の揺れです。
下がったときに自分を責めないためには、
最初から「揺れる前提」で持つことが大切です。
生活を犠牲にしない
これは、いちばん大切にしていることです。
ゴールドは、
生活を豊かにするための手段であって、
生活を苦しくするものであってはいけません。
・貯金が不安になる
・急な出費が怖くなる
・毎月の支払いに余裕がなくなる
そんな状態になるなら、
その量は、あなたにとって多すぎます。
ゴールドは、
「なくても困らないお金」で持つからこそ、
支えになります。
これらはルールというより、
自分を守るための姿勢です。
この距離感が保てていれば、
ゴールドは不安の種ではなく、
人生の中で静かに寄り添ってくれる存在になります。
まとめ|ゴールド投資は「正解」を探すものじゃない
ここまで読み進めてくださったあなたは、
きっともう気づいていると思います。
ゴールド投資に、
誰にでも当てはまる正解はないということに。
同じ相場を見ても、
- 落ち着いて受け止められる人
- 気になって仕方がなくなる人
反応は、人それぞれ違います。
それは知識や経験の差ではなく、
お金との距離感の違いです。
不安があるなら、その不安を無視しなくていい。
怖いと感じるなら、無理に前へ進まなくていい。
ゴールドは、
人生を大きく変えるための主役ではありません。
日々の仕事や生活があって、
そのすぐ横で、
感情を揺らしすぎないために寄り添う存在です。
だから、
「持っていることで、少し気持ちが整う」
「なくても困らないけれど、あると安心する」
そんな感覚を大切にしてほしいと思います。
人より早く動かなくてもいい。
うまく当てなくてもいい。
冷静な自分でいられること。
それこそが、
ゴールド投資が静かに支えてくれる、
いちばん大切な価値だと、僕は思っています。
参考情報・出典
- EconoFact|Why Has the Price of Gold Risen So Sharply?
- Wikipedia|Flight to quality(安全資産への資金移動)
- 楽天証券メディア|投資家心理と価格変動
※本記事は筆者の体験と考え方をもとにした情報提供を目的としています。
投資判断はご自身の責任で行ってください。

コメント